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外科

2024年10月1日掲載

 

 

トピックス

人工膵臓を用いた周術期血糖管理

人工膵臓とは、生体膵機能を模擬するために特殊なプログラムを搭載した装置で、持続的に血糖値をモニタリング、一定値にコントロールすることを可能とします。

大きな手術のように、私たちの体が外から大きなダメージを受けた場合、血糖値が急激に上昇し、生活習慣病などで知られるようになった糖尿病と同じ状態になります。そのような場合、手術後の治癒の段階において感染症を引き起こす可能性が高くなってしまいます。

周術期(手術中、手術後)に人工膵臓による血糖管理を行う事で、患者様の手術後の感染症などへの発展を抑制することが既に報告されており、患者様の術後合併症を減少し、早期退院に寄与します。

過去40年にわたる実績が認められ、現在日本では周術期(手術中、手術後)に人工膵臓装置を用いた血糖値のコントロール(インスリンやグルコースを自動で注入することによって常に適正な血糖値に保つ働き)が保険診療として認可され、2024年3月現在、滋賀県では当院のみ実施可能となっております。

 

 

膵癌に対する術前化学療法に対して、高気圧酸素療法を併用

高気圧酸素療法とは、患者さんに大気圧より高い気圧環境下で高濃度酸素を呼吸してもらい、これにより病態の改善を図る治療法をいいます。効果としては、

① 多量の溶解酸素による低酸素症の改善効果

② 溶解酸素と圧力の物理的効果

③ 酸素の毒性を逆用する効果

などがあります。

高気圧酸素療法の適応疾患のなかに、『放射線または抗がん剤治療と併用される悪性腫瘍』があり、わたしたちは、膵癌患者さんの術前化学療法時に高気圧酸素療法を併用することにより、治療効果を高める工夫を行っています。

 

 

肥満外科(減量・代謝改善手術治療)

現代では、世界中で肥満の方が増えています。BMI(*注1)が35以上の高度肥満症の患者さんでは、放置すると命に影響したり、生活に支障をきたす可能性のある、肥満に関連した健康障害(2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝、膝関節等の関節痛、心不全、月経不順、腎機能障害等)を伴うことが多く認められます。肥満は大腸がん等の悪性疾患にも関連すると言われています。高度肥満症は、“気合い”等、いわゆる“精神的な強さ”で治るものではありません。専門的な治療を要する、“病気の状態”です。

高度肥満症に長期的な効果を期待する治療手段として、肥満手術(減量・代謝改善手術)があります。この治療は世界では比較的多く行われており、2020年(米国外のデータは2021年)では1年間に約31万件行われています。この治療は脂肪吸引等、美容を目的とする治療ではなく、 胃を手術することによる、肥満および肥満にかかわる健康障害の改善を目的とした治療です。この治療により、肥満に関連した健康障害(前述)が改善することがあります。当施設では2024年3月現在、滋賀医科大学と連携し2024年度よりこの治療を開始する準備を整えています。

(*注1:BMI;Body mass index=体重kg÷身長m÷身長m)

 

 

乳腺専門医(女性非常勤医師)による治療

より専門的で高度な乳腺疾患に対する診療(手術や化学療法)が、当センターで提供できる体制を開始しています。

 

診療内容

診療体制

個々の症例に応じた最善の治療を提供するために、消化器外科専門医による診療を提供しています。

 

 

診療理念と内容(臨床・研究・教育)

消化器外科各領域では専門医(食道・胃・肝胆膵・大腸肛門)、日本がん治療認定医が在籍しており高度で専門的な医療を地域で完結できる体制を構築しています。また乳腺疾患に対して毎週木曜日に専門外来を行い、手術、薬物療法を行っています。

当院は滋賀医科大学の地域医療教育研究拠点として医学生、研修医の教育、専門医の育成を行い、さらに倫理委員会(当院)で承認された研究を実施することを通してリサーチマインドを持ち続ける医療チーム形成を目指しています。

 

 

臨床

 

 

 

 

各領域の概要


食道胃腸外科(食道がん・食道胃接合部がん・胃がん)

食道がんや食道胃接合部がんの外科的治療を行っています。食道がんの治療では、放射線治療や抗がん剤による化学療法を組み合わせることが多く、これらの治療をガイドラインや様々な知見に基づいて患者さんにご説明し、患者さんとご相談して治療方針を決定しています。

胃がんには、手術適応である場合、積極的に腹腔鏡下手術を行っています。開腹で手術を行うこともあります。進行している胃がんでは、化学療法を組み合わせて治療を行っています。

また、食道裂孔ヘルニア、胃GIST、胃軸捻転、胃十二指腸潰瘍穿孔の手術治療も、腹腔鏡下手術を主として行っています。

いずれの手術も、術後は早期に歩いていただくことを目標としています。術後は土日も理学療法士による運動療法を行ない、お身体の術後早期回復を目指しております。

 

 

大腸外科(大腸がん)

大腸がんの治療の第一歩は手術です。肝臓や肺に転移していたとしても可能な限り手術治療を行います。また肛門に近いがん(直腸・肛門管がん)に対して、永久人工肛門を極力避ける治療を行っています。さらに腫瘍の病理組織検査、遺伝子検査を行い最適な薬物治療を実践しています。

 

 

肛門外科(肛門疾患)

肛門に関する悩み(直腸脱、肛門脱、イボ痔、痔瘻、肛門周囲膿瘍、裂孔、肛門狭窄など)をお持ちの方は多数おられます。一度ご相談下さい。

 

 

肝胆膵外科(肝がん・胆道がん・膵がん等)

肝切除、血管合併切除を伴う膵切除などの高難度手術も適応を選んで実施しています。肝胆膵疾患においては、手術のみならず、全身化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療が必要とされ、当院でも積極的に集学的治療を行うことで、治療成績の向上に努めています。

化学療法は、がん治療認定医およびがん薬物療法認定薬剤師が連携して治療にあたっています。外来化学療法室を備える当センターでは、外来通院による化学療法を行うことで、患者様の日常生活を極力維持できるよう努めています。

放射線治療は、常勤の放射線科医により行われます。当センター放射線科は、診療部門と治療部門に分かれていて、当センター備え付けの照射機器を用いた放射線治療を行っています。

 

 

一般外科診療(胆石症、そけいヘルニア、痔核、急性虫垂炎・胆嚢炎、消化管穿孔、腸閉塞等)

良性疾患に対する定期手術のほか、腹部救急疾患に対する緊急手術も行っています。腹部救急暫定教育医・腹部救急認定医が常勤しているほか、当センター麻酔科(麻酔科学会専門医・指導医)ならびに救急科(日本救急医学会救急科専門医、日本集中治療医学会専門医)と連携して、迅速かつ適切な外科治療と周術期管理(集中治療含む)を行う体制をとっています。そけい部ヘルニアは、特に男性に多い病気ですが、女性も生じることがあります。当施設では、社会復帰が早いとされる、腹腔鏡下そけいヘルニア修復術(TAPP)を半数以上の患者さんに行っています。腹壁瘢痕ヘルニアでも、腹腔鏡下手術を積極的に行っています。

 

 

診療実績

 

  2020 2021 2022 2023
食道疾患 1 0 0 1
胃十二指腸悪性疾患 18 21 15 19
胃十二指腸良性疾患 5 3 0 3
大腸悪性疾患 36 41 39 30
大腸良性疾患 17 20 20 14
小腸疾患 17 20 8 13
肝胆膵腫瘍 14 18 18 11
間葉系腫瘍 0 0 0 3
乳腺疾患 0 0 9 5
ヘルニア 56 46 41 55
胆嚢炎・胆石症など 38 36 38 50
肛門疾患 20 21 13 15
虫垂炎関連 24 22 25 19
腹膜炎 1 0 1 0
腸閉塞 0 0 10 2
分類不能 2 5 0 3
その他(生検・局麻) 47 41 37 34
合計 296 294 274 277

 

 

認定施設・関連施設

 

 

外来担当医表

診療科
外科1診赤堀 浩也山口 剛寺田 好孝目片 英治赤堀 浩也
外科2診-目片 英治-永井 望交代医

1診は初診優先

人工肛門(第1・3 月、午後)

金曜交代医:第1、3、5週 永井医師/2、4週 寺田医師

診療科
乳腺外科---冨田 香-

乳がん検診(自治体検診)は月・金曜日に実施

 

 

スタッフ紹介

氏名
目片 英治
役職
副院長
出身大学
滋賀医科大学 医学部 昭和63年卒業
得意分野・得意疾患
  • 消化器外科
  • 大腸肛門外科
専門医・認定等
  • 日本外科学会 認定医、専門医、指導医
  • 日本消化器外科学会 専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本大腸肛門病学会 専門医・指導医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 卒後臨床研修評価機構プログラム専門医
氏名
山口 剛
役職
外科医長
出身大学
滋賀医科大学 平成9年卒
得意分野・得意疾患
  • 消化器外科
  • 上部消化管外科
  • 肥満外科
  • ヘルニア疾患
専門医・認定等
  • 日本外科学会
  • 専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会
  • 専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本食道学会 食道科認定医
  • 日本肥満症治療学会 評議員
氏名
赤堀 浩也
役職
外科医長
出身大学
滋賀医科大学 平成11年卒
得意分野・得意疾患
  • 消化器外科
  • 肝胆膵疾患
専門医・認定等
  • 日本外科学会 専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 日本腹部救急医学会 腹部救急教育医 腹部救急認定医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本胆道学会 認定指導医
  • 日本膵臓学会 認定指導医
氏名
寺田 好孝
役職
外科医師
出身大学
自治医科大学 平成22年卒
得意分野・得意疾患
  • 一般外科
  • 消化器外科
専門医・認定等
  • 日本外科学会 外科専門医
  • 日本消化器外科学会 専門医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本がん治療認定機構 がん治療認定医
  • インフェクションコントロールドクター
氏名
永井 望
役職
外科医師
出身大学
滋賀医科大学 平成31年卒
得意分野・得意疾患
  • 一般外科
  • 消化器外科
専門医・認定等
  • 日本外科学会
  • 日本消化器外科学会
氏名
冨田 香
役職
外科医師(非常勤)
出身大学
得意分野・得意疾患
  • 乳腺外科
専門医・認定等
  • 日本外科学会専門医
  • 日本乳癌学会専門医
  • 検診マンモグラフィ読影認定医

 

 

研究実績

研究

 

終了した臨床研究

当院で行った臨床研究は、積極的に国内外に発信しています。

•尾側膵切除術に対する術中膵管ドレナージの安全性と有用性に関する検討 (UMIN000030872)

 

学会発表;

第55回日本膵臓学会 一般演題(口演) 2024年7月26日 宇都宮市

・尾側膵切除術における術中内視鏡併用下の膵管ステント留置による術後膵液瘻予防効果

論文発表;

Cooperatively manual and endoscopic pancreatic stenting: A unique intraoperative procedure for postoperative pancreatic fistula after distal pancreatectomy

Asian journal of Surgery 47 (2024) 4188-4189

 

現在進行中の臨床研究

掲載の研究は当院の倫理委員会において審査され、全て承認を得ております。

教育

医学生・研修医の教育と指導を行い、医療人として豊かな人格を持った外科医の育成に努めています。

 

 

業績

国立大学法人 滋賀医科大学 総合外科学講座へ